農水省6月版のジビエ数字が示すボトルネック。食用にできる個体を、適切な施設へ運ぶこと
農林水産省の2026年6月版資料は、826施設、利用量2,678トン、それでも捕獲されたシカ・イノシシのうち正式なジビエ経路に入るのは約1割という、現場の詰まりを数字で見せています。

画像クレジット: Gibier infrastructure route editorial illustration by wildfood.jp editorial artwork, Original site artwork
6月版は、レシピの話ではありません
農林水産省の2026年6月版資料には、野生肉をふわっと持ち上げるより役に立つ数字が出ています。令和6年度に野生鳥獣の食肉処理を行った施設は全国826施設。ジビエ利用量は2,678トンで、平成28年度の2.1倍です。一方で、捕獲されたシカ・イノシシのうち、食肉加工・流通された割合は、ハンターの自家消費を除いて約1割とされています。
ここが本題です。合法的に捕獲されたシカやイノシシでも、冷却し、確認し、搬送し、許可を受けた施設で処理し、表示し、買い手に渡せなければ、安定した食材にはなりません。廃棄の手間になるか、自家消費になるか、地域資源としての機会を逃すことになります。
鳥獣管理に必要なのは、地味なインフラです
ジビエについて使える主張は、野生肉を食べれば鳥獣問題が解決する、ではありません。解決しません。農水省資料でも、鳥獣被害対策は個体群管理、侵入防止対策、生息環境管理の3本柱として整理されています。食肉利用は、合法的な捕獲の後に来る実務の一部です。先に来る魔法ではありません。
必要なのは、良い意味で地味な仕事です。食用に適した個体を見分ける知識のある捕獲者、速い搬送や冷却、処理能力、解体できる人材、記録、トレーサビリティ、そしてすべての個体を食用にすべきではないと理解する買い手。そこが、責任ある活用とただの宣伝を分けます。
買い手は数字をどう使うか
飲食店や小売は、この6月版の数字を、仕入れの質問に変えるべきです。どの施設で処理されたのか。食肉処理業の許可はあるのか。種、部位、処理日、冷蔵か冷凍か、ロット情報はあるのか。調理案内はあるのか。継続供給なのか、一回限りの捕獲なのか。
厚生労働省の衛生管理の案内も、ここでは中心です。野生のシカ肉やイノシシ肉には食中毒リスクがあり、飲食店や販売店向けの肉は適切な許可施設を経たものを仕入れ、十分に加熱する必要があります。透明性は、紙のための紙ではありません。野生肉を、鳥獣問題を皿の上で全部解決したふりをせず、実際に役立つ食材にするための条件です。
さらに読む
- 日本のジビエとは何か。買い手のための実務ガイド — ジビエガイド
- わかやまジビエフェスタは、冬メニューだけでなく流通の実地テストです — ジビエ流通ノート
- 球磨村の新しいジビエ施設は、日本に必要な地味なインフラです — ジビエの受け皿
出典・参考リンク
- 捕獲鳥獣のジビエ利用を巡る最近の状況(令和8年6月) — Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries (JA)
- 知って!楽しむ!ジビエ(令和8年6月版) — Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries (JA)
- 厚生労働省 野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針 — Ministry of Health, Labour and Welfare (JA)
- ヒーロー画像:ジビエ流通インフラの編集用イラスト — wildfood.jp
関連動画・メディア
- ヒーロー画像:ジビエ流通インフラの編集用イラスト — wildfood.jp